塔(2021年4月号)

無垢な祝福のように雪バス停の無人の椅子をつめたく濡らす

冷え切った月が昇って人権のあやうい国の夜に浸れり

終わらぬ冬に絶えた火種を灰にするごとく五輪の聖火が燃える

自助の自が失われゆくじっと手を見つめて過ごす我の正月

ふと思い出されたように壊れた人生の数がネットニュースを飾る

魂がいまだ滅ばぬ証なり 竹籠にうす桃色の花