ベタの弔い(たにゆめ杯3 ゆうぐれ自由大臣賞)
小鳥にも春の換羽のあることを燃え尽きた眼のひとに告げられ
呼吸するあいまに雲の流れては崩れて落ちるまでを見ている
銀の蛇アイシャドウ重ねて徐々に鱗の光を宿すまばたき
透明な水面は夜に閉ざされて腕をもがれた蟹はまどろむ
綻びを見つけないため月光を遮断するためのカーテンを引く
息継ぎのように目覚めてハンティングトロフィーの目に瞳孔はない
歩くには向かないけれど鳥の脚集めつつ夜明けを待っている
他人事と思えることの幸せを枯れた湖にも名はあった
トラディショナル・ベタの弔い朽ちてゆくことのできない死にも祈りを
真夏日に水色のブラウスを干す牝鹿を撃ったことは忘れて