2021-04-28から1日間の記事一覧

塔(2021年4月号)

無垢な祝福のように雪バス停の無人の椅子をつめたく濡らす冷え切った月が昇って人権のあやうい国の夜に浸れり終わらぬ冬に絶えた火種を灰にするごとく五輪の聖火が燃える自助の自が失われゆくじっと手を見つめて過ごす我の正月ふと思い出されたように壊れた…

塔(2021年3月号)

いつかいつか楽になりたい湿気らせた花火の捨て方がわからない雪の夜何かを急ぎ飛ぶ鳥の雪に紛れて落ちてゆく羽開いたら光があふれてくるような扉ではない戸を開ける日々この冬の最低気温また遠くないうちに忘れる朝のことそこに在る真冬の風に目を開ける鳥…