2020-12-16 塔(2020年12月号) 短歌 同じ夏 狂った蝶がアスファルトに見ていた花のまぼろし思う 感情の振り子はいつもやや遅い何もない真夏の海で泣く きっと添い遂げるあなたと迎えよう春に生まれた白い小鳥を 神苑を青鷺のゆくほそい指水面を撫でるように割りつつ 胡椒の瓶(さっきあなたが閉めた瓶)取り落としこぼれ出る黒い粒 暮れてゆく古都であなたと白鷺のおおきな翼の背景になる 傘立てに重なっている傘の骨 引き止めたくて掴む手の骨